小説・さらばプロ野球

2024年10月11日。
日韓のプロ野球チームの優勝者で争われる極東シリーズは4戦目にして早くも大詰めを迎えていた。
もともとは1リーグになってしまったNPB(日本プロ野球)側が苦肉の策としてKBO韓国プロ野球)側と協議の結果始まったシリーズであった。最初こそ日本側が優勢であった。しかし、ここ最近は韓国側にいい様にあしらわれているというのが実情であろう。
今年は起亜タイガースと読売ジャイアンツとで争われることになったが、しかし、ここまで起亜が3連勝と波に乗り、日本代表であるところの巨人は後がない。
東京ドームの観衆は2万人と発表された。5万5千人と言い含める余裕がなくなっていることは明白で、そのうちの6割は起亜側の応援団であろう。
はっきりいって、あのときから日本の野球の熱は冷めてしまったに等しく、有望な人材は殆どメジャーに、韓国に、台湾にと逃げてしまっている。
起亜先発の安河内淳一もその一人。李文遠とのバッテリーコンビで、奪三振の山を築いていた彼も、もともとは甲子園で母校を2回の優勝に導いたエースだった。『レベルの高い方を選ぶ』とドラフト指名を拒否し、単身韓国に渡ってテストを受験し合格、以後起亜投手陣の柱として実力をつけていった。
そのときバッテリーを組んでいた捕手で主砲の松宮翔馬は巨人に入団し、新人王当確と言われるほどの成績をつけていたが、極東シリーズに入ってからぱたりとスランプに陥ってしまった。いや、彼だけではない。他の巨人打線も同様である。
特に第2戦では辛徳孫にあわやノーヒットノーランに押さえ込まれていたことからも、その不調ぶりが伺える。
試合前、起亜の矢野輝弘監督はこう漏らした。
「皮肉なものだ…もしあの時こうなることを早く気づいていたならば…」
偶然耳に入れた安河内が聞き返したが、矢野は
「いや、昔のことを思い出していただけさ。大してたわいもないことだよ」
と煙に巻いた。
そして…




この日、日本プロ野球は壊滅的な大打撃を受け、野球界に衝撃が走った。
この日以降、日本で野球はマイナーなスポーツへと成り下がったのだ…




※この物語はフィクションです。実在する個人や団体とは全く関係ありません。

勢いで書いてしまいました、こんな警告文めいた小説を。
現実にならないことを祈る…